2.SEX(承前)
素子の指が舞のアナルに触れた刹那。
「う!」
舞の身体が、激しくしなる。
「こっちはどう?前を使ってないのなら、こっちでしょう?」
愛液でぬるぬるになった指を、襞の周囲にそろりと這わす。
「あ…っ」
ローションを塗る様に、その周りに塗りたくっていく。
「ああ…っ」
舞は、その動きに一々敏感に身体を蠢かした。
「…っは…」
出てくる吐息迄もが、明らかに、先程とは違う。
素子が驚いた様な嘲りの声を出した。
「へえ…処女なのに、こっちだけ開発されてるなんて、すっかり変態ね。どうせ貴女がこっちが良いって誘ったんでしょ?」
「し…しらぬ…っ」
声の力が弱い。
「ま、アイツはアナルも好きみたいだけど。だから相性がよかったのかしら?」
「ち、ちが…う…っぅあ」
素子は言葉が終わる前に、その穴へ指を突き入れた。
「あ!」
舞の身体が激しく震え、腰がびくり、と動く。
指の動きに合わせて、舞は身体を大きくうねらせた。
「身体は正直ね。貴女、とても世間に見せられない程めちゃくちゃよ?そんなに気持ち良いの?そんなんじゃ、誑かされる男が多そうだわ」
「う…ぬぁ…あぁは…う…」
意志を保とうとしつつ、結局保つ事も叶わず、淫欲の波に翻弄されている様な表情。
「あ…ぅ…んん…ふ、…ぁ…っは…ああ…ん…っつ、ぁあ」
素子はそれを眺めながら、不意に指を抜いた。
「…あ…?」
突然の喪失感に、事態の理解できない顔をして、舞はのろのろと頭をあげる。
素子は立ち上がると、司令机の裏側から棒状の何かを取り出した。
そして、ゆっくり服を脱ぐと、その美しい裸体のまま、舞の前に仁王立ちした。
「ねえこれ、何だと思う?」
とろりとした舞の目の前に、その棒状のものを近づける。
微妙な反り形の付いたそれには、両側に男性の陰茎を思わせる、くびれがついていた。
「これはねえ、ウォードレス使用後のゴム屑から型取りして、少し加工したモノなの」
素子は微笑むと、それをうっとりと眺めた。
「そう、ア・イ・ツの、よ」
「!」
意識が薄れかかった様な目に、光が走る。
「…欲しい?」
素子の目に、挑発的な、色。
「でも、貴女にはあげない。これは、私のモノ」
言いながら素子は、ゆっくりと、くびれの部分を美味しそうに舐めた。
「これは、私だけのモノよ」
ツ…と条件反射の様に、透明な液が、腿を濡らして床に滴る。
「フフ…」
そして徐に、その張型の片方を、自分の中に埋めていく。
「う、あは」
1/3程くわえ込んだ処で、素子はなまめかしい吐息を上げた。
「ん…ふ…っあ…やっぱり…良い、気持ち…」
とろとろと流れ落ちる雫は激しさを増し、床に大きなシミを形作る。
夢見心地の眼差しを、中空に漂わせていた素子と、それを見上げる舞の視線が合った。
「…なぁに?」
羨望と嘲笑と屈辱と哀れみの入り交じった、複雑な感情の色が、互いに交差する。
「これが、欲しいの?」
「…!」
舞は目を逸らした。
「はっきり言わないと、判らないわよ?」
「く…」
「どうしたの?欲しいなら欲しいとおっしゃい?」
「い…要らぬ!そんな、代用品など…!」
素子の表情に、厳しいものが走る。
「代、用品…?」
ダン!
ムッとした表情で、素子は舞の陰部を踏みつけた。
「ぅああ!」
そのまま足先を突っ込んで、構わずぐしゃぐしゃと嬲る。
「馬鹿にしないでよ!私はね、こんなもの無くたって、恋愛にも男にも不自由してないの!男知らずの貴女なんかに哀れんで貰いたくないわ!」
「ああ!あああ!ああ!あああああ!」
がくがくと舞の身体が仰け反る。
だが、素子の嬲りは止まらない。
「はっきりおっしゃい!これが欲しいと!私の臭くて汚いXXXXに入れて下さいと!這い蹲って私に懇願するのよ!」
「…う」
す、と足の動きが止まって、素子の身体が舞に近付く。
「なあにその目?欲しいんじゃないの?私は別にどっちでも良いのよ?どうせ一回も入れた事がないのなら、これの良さは判る訳無いし。恋人と言っても、所詮その程度って事よね。私は貴女と違って、アイツを隅々迄知っている。アイツに合うのは私の身体しかないのよ」
「…!」
「プライドが傷ついた?おあいにく様。恨むなら彼を恨むのね。変態を調教する位だったら、ちゃんと処女を奪うのが、スジじゃない?」
「へ…へん…?!」
「そうでしょう?だって処女なのに既に後ろが良いなんて、他の男が聞いたらびっくりよ?尤も、もう、処女は私が頂いちゃったけど」
「!」
「どうするの?要らないの?」
言いながら素子は舞のアナルに手を這わす。
「うあ…っ!」
「要るの?要らないの?」
「…っあ!…ああ!…あああ」
「簡単な事じゃない。そんな事も言えないの?」
「あああ!…んああ!あ…っ!」
「…」
快感に身をよじる舞から、再び素子は離れた。
「ああ…っ?!…あ?!」
ガクガクと腰を震わす舞を見下ろす様に、立ち上がって椅子に座る。
「貴女が言えないのなら、私には何もしてやる義務は無いわ。そのままそこで見てなさい」
「…ぁ!…う」
「充たされないまま、私の至福の様を見るのよ。そして、完全に愛して貰えなかった自分の不幸を呪いなさい」
舞を一瞥すると、素子は自分の張型を握って、ゆっくりと動かし始める。
「…っあ…ん…んん…っ…っふぅ…んん…ぁあ…ん」
淫らな吐息が、鼻から熱く抜けて、その音は這い蹲る舞の耳朶を刺激する。
「…くっ」
震える腰のその先で、激しく溢れた愛液が、幾重にも腿を伝う。
ズキズキする様な快感が、下腹と脳髄の奥を痺れる様に打ち付けた。
気も狂わんばかりの肉欲が、屈辱と怒りを、完全に凌駕する、刹那。
「…のむ…」
やっとの思いで、舞は言葉を口にした。
「…い、入れるが、良い」
素子は気が付かないかの様に、んふ、あは、と声をあげている。
再び、舞は声に力を込めた。
「頼む…!わ、私にも、それを…い、入れてくれ…っ!」
素子の手が止まった。
欲に爛れた目に、嘲笑の色がある。
「…貴女…そういう言い方しか出来ないの?とっくに芝村的プライドなんて、欠片も無くなってると思ってたわ」
紅潮した頬のまま、薄く、笑う。
「言葉が、違うでしょう?人にモノを、頼むのよ…?さっき、言った事、覚えてないの?」
舞は唇を噛んだ。
心とは裏腹の、ヒリヒリする様な消失感が、下腹を激しく苛む。
素子の真ん中で屹立するそれが、とても、欲しかった。
あの男のモノだというのも、最早どうでも良い位に。
絞り出すように声を出した。
「た、頼む…っ!それを…わ…わたしの…く…臭くて…きたな…いっ…×…××××に…い、入れて…く…」
言葉の一つ一つが矜持を深く傷つけ、叩き折っていく。
語尾は、はっきり言えなかった。
だが、素子は優越に充ちた顔で、舞を睥睨した。
「そう、それなら仕方ないわね」