3.尚絅高校 0:00
全員が帰途についた深夜。
「…こんな無茶は、これっきりにして欲しいですね」
遠坂が、目の前の相手に口を開いた。
「フフフ、何が嫌なのですか?タイガァ」
瞬速パンチが脇の岩田を吹き飛ばす。
「ノォオオオオオオッ!」
「私をその名で呼ぶな!」
だが正面の相手は意に介さぬ様に、口を開いた。
「嫌なのですか?」
「いや、そんな事は…しかし…」
「良い事じゃありませんか、遠坂君。田辺さんも、ののみさんも、凄く嬉しそうでしたよ」
遠坂の頬に朱が入った。
「…そう、ですか…」
正面の相手の口元に、薄い笑みが浮かぶ。
「こんな簡単な事で、幻獣共生派である貴方の、その能力(ちから)の理由をお目こぼしして貰えるなら、安いものじゃありませんか」
遠坂の顔が、歪み、握る手に力が入る。
「しかもみんなに喜んで貰えるんですよ?どう転んでも、君に良い話しだと、思うのですがね」
「…フフフ、それは彼には厳しい物言いでは?」
いつの間に復活したのか、立ち上がった岩田がシリアスに笑う。
「岩田君、鼻血を拭きなさい」
「失礼」
「遠坂君の魔術に岩田君の科学力。君らが二人揃えば、満面の桜を咲かすこと位容易いのでしょう?違いますか?」
遠坂は絞り出す様に、応える。
「…判っていますよ。司令」
善行の眼鏡が、月の光を受けて、きらり、と光った。
「結構。またいつか、頼みますよ」