再会・WhatIf
−One_thousand Music Inspire Ver.− 
再会・WhatIf −One_thousand Music Inspire Ver.−
「高機動幻想ガンパレード・マーチ」(アルファ・システム)より 
2002-03-24 公開



 なんて、青いんだろう。



 この、海の見える高台には、着任早々から、何度も足を運んでいる。
 それなのに、何時眺めても、出てくる感想は、同じ。

 真夏の強い日差しに、煌めく鮮やかな、水面。
 反射した光が、ハーフリムのレンズの隙間に入り込んで、眩しさがいや増す。
 ちらちらと輝く、射付ける様な明るさが、目に痛い。

 一本だけ、目印の様に立っている木の、その影に入って、息を付く。
 善行は、軍服の襟をくつろげ、眼鏡を外して、顔に浮いた汗を拭った。
 本土の湿気た暑さとは違う、焦げる様な、それでいてどこかカラリとした暑さも、それなりに、心地良い。


 「…」


 木陰を、爽やかな風が流れ、遠くの潮騒が、心を充たしていく。
 その、穏やかさが、少しだけ、記憶を、刺激した。


 −高い丘の上に佇み、手を振る、白いワンピースの、少女。
  その長い髪と、裾を風にはためかせ、
  飛ばされない様に、帽子のつばを押さえる。
  その口が、彼の名を呼び、
  柔らかい笑みが、向けられる−


 少々感傷的になったらしい、と苦笑する。
 幻獣が駆逐されて数年、自分にも平和ボケが現れたのかも知れない。
 善行は再び、水平線に目をやった。


 どこまでも、青い、海。


 どこまでも、青い、空。


 このまま、すべて、溶けてしまいそうな、鮮やかに抜ける、青。





 「…さぁん」





 名前を呼ばれた様な気がして、振り返る。

 丘の麓から、駆け上がってくる、白い、少女。
 善行は、眼鏡を掛けるのも忘れて、目を細めた。
 きっと、夏の日差しが見せる、蜃気楼−




 否。




 「…さん」
 昔の呼び方が、思わず口をついた。
 よろける様に、木陰を飛び出して、呆然と、手を、のばす。
 真っ白な、サマードレスは見間違いでも何でもなかった。
 満面の笑みを浮かべて、はっきりと手を振る、あのひとは−


 心地良い風が、全てを洗い流すように、吹き抜けた。


−Ende.−


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