1.
素子は、ゆっくりと昇る。 確かめる様に、一歩一歩、大地を踏みしめて。 周りの景色など、一切目に入らない。
ただ、一心不乱に、昇る。
重い荷物が形の良い手に、食い込んでくる。 仕事柄、重い物は持ち慣れているが、それでもこの重さは堪えていた。 普段扱うものよりは絶対に軽い筈のものだが、素子にとっては戦車装甲なんかより、はるかに重い荷物だったのだ。 この重さは心が感じてるもの。 そしてこれは、
自分の罪の重さだから、 投げ出す訳には行かない。
ただ一人、素子は、花岡山を昇る。