浸潤 浸潤 「高機動幻想ガンパレード・マーチ」(アルファ・システム)より
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2003-06-24 初版 希望者のみ配布 2003-06-25 第二版 公開 |
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そこに倒れていた少女に、気を取られなければ、こんな事にはならなかった。 長い髪を広げた、仰向けの、死体。
こんな深夜に何故、と思う間もなく奴らに取り囲まれ、絡め取られた。 (多目的、結晶、か!)
その神経の集積地に、何かを仕込まれた。 それとともに、「彼」の意思で動く個所は、何処にも無くなった。 「くっ…!」
「彼」が侵した組織を、更にその低域で浸潤する、何か。 否。
切り離されたのは、部分だけ、だった。 さながら、仲間を慰撫する様に。
「くぁ…っ」 這いまわる触手の先が、幾重にも割れた。
割れた先が、「彼」の下腹部をぞろり、と這い、それを包み込む。 「彼」の意識野に、ぼんやりとしたシルエットが浮かぶ。
静かな歌声と、優しげな眼差し。 その「身体」の、下腹部に−
「…っふぅ…っっ!!」
だが、「彼」の意志に反して、身体は動く事も無く、そのシルエットは (やめろ、やめてくれ!)
有り得ない、好色そうな笑みが哀しくて。
いやだ。 気持ち良いなんて。 いっそ美しい程に透明な触手が蠢いて、「彼」の身体を背後から貫いた。
焦点の合わない紅い眼から、す…と涙が又、こぼれて落ちた。 −END.− |