GPM_Replay/
涙の河を越えて
GPM_Replay/涙の河を越えて
「高機動幻想ガンパレード・マーチ」(アルファ・システム)より 
2001-05 @Nifty's PATIO 初出分に一部修正

 降下作戦の「夢」を見る前夜、嘆く萌の「声」を聞いてしまって、心がゆれる。これは同情なのかもしれないと思う一方で、萌を抱きしめてあげたい衝動に駆られてしまい、最早ののみの恋人でいる資格はないな、などと思う。あれ程色んな人に「ののみを頼む」と言われたのに。でも、泣かれるのが怖くて、なんとなく切り出せないでいる。僕は弱いな。

 夢見が悪かったので、駄目元で依頼された降下作戦を断ってみる。あっさり認めて貰えたので拍子抜けがしたが、準竜師の覚えは悪い方にいってしまったかな。でも、多分まだ全然勝てないだろうから、死んで交渉不利なカードになる位だったら、例え卑怯でも断った方が利口だろう。でも、噂の「芝村」とかいう人たちなら、死者でもジョーカーに出来るのかも。僕の代わりに行かされる人には申し訳ないけど、せめてもう少し、戦いに慣れないと。きっと僕よりましな闘いをして、帰ってきてくれる、と思いたい…ふ、やっぱり僕は身勝手だな。

 夢見が悪かったので(笑)、朝から色々と整備の人たちに小細工する。具体的には工具箱を配っただけだけど、森さんには「要らない」って断られてしまった。うーん、彼女にはいつもつれなくされちゃうな。嫌いって訳じゃなさそうだけど…女心は難しい。難しいと言えば、狩谷も何やらややこしい屈託を抱えてるみたいで、話が難しいな。ああいう状態じゃ仕方ないんだろうけど。それでもお昼まで一緒に整備する。ランクはBのまま。…ひょっとして森さん、僕のこと仕事の邪魔、とか思ってるからつれないのかな。

 お昼どうしようかな、と校舎前をふらふらしてたら、善行司令に誘われる。断る言われもないので一緒に食べて、食後に話しかけてみたら、とても機嫌良さ気だったけど、ののみが話に加わってきたら、微かに不機嫌そうな顔をした。あれ?


 午後の授業の後、萌の不安が緩やかに教室を満たす。呼応するかのように降りだす雨。思わず、駆け寄って励ましてしまった。ごめん、ののみ。きっと僕は君を選べない。

 萌が持ち直したのを確認してから仕事。19時まで頑張る。大体この位の時間になると、何故か瀬戸口が弁当を持ってきてくれるんで、最近は夜食を作ってないんだけど、今夜は何となく予感が働いて、自分で弁当を作って食べる。何故か来須が寄ってきて「萌を大事にしてやれ」と言う。わずかに心が痛んだ。予感が当たって程なく出撃命令が出た。こう夜戦が多いとこの辺も鍛えとかないとな、と軽く思う。後にそれが悔やむ事になる事とも知らずに。



 今度の実戦は、今までに見た事もないような幻獣が沢山居る場所だった。名前や写真でしか知らないようなスキュラが、いつもなら1〜2匹しかいないミノすけが沢山居る。あれがきたかぜゾンビって呼ばれてる奴か。これが本当の戦場。「夢」も大概だったけど、現実も突然シビアになった。断った準竜師の腹いせかな?とか思って笑ってたら「へらへら笑うな」と舞に怒られた。まあいい。闘い方を見直せとの暖かい思し召しだとでも思う事にしよう、と前線へ飛び出す。ざっと索敵して、二手に分かれた敵の内、近い位置の大物がスキュラとミノタウロスである事を確認し、射程内に取り込む方向にステップ。接近する間に友軍援護と若宮戦士の攻撃で、何匹も大物が屠られていく。じゃあこちらは雑魚をまとめて殲滅する方を引き受けようと、被弾しつつも突きまくって時間を稼ぎ、ミサイル二発。それでも死なないミノタウロスをメッタ刺しにして、自分の側を掃滅し、もう一方を支援しに行こうとして、それは起きた。

 「来須銀河 戦死!」

 瀬戸口の落ち着いた声が示す位、余りにあっけない最期だった。目の端で捉えてた状況では、壬生屋の奴が突進してゴルゴーンに掛かりきりになってる間に、友軍機が次々ミノすけに討ち取られて行っていた、その間の出来事だった。壬生屋の奴…っ!と思うが、こちらも手一杯でとても間に合わなかったのだから攻められない。僕たちは未熟なのだ、と思う片隅で、本当に間に合わなかったのか?とも考える。最近やっと打ち解け始めた相手だったから、心が痛む。だが、これは戦争なのだ。わかってる。戦場で悔やんでいたら、明日を思えない。
 でも、敵は取らせて貰う。

 「その心は闇を払う銀の剣…」

 呟くように歌い出す。これは挽歌だ。生き抜いた者達が、踏み台にした命に対する贖罪の歌。生きようとする魂が、消えゆく魂に捧げる、熱き思いの詩。

 「敵、増援、接近中!」

 司令の歯ぎしりが聞こえる。僕たちはボロボロだ。でも、生き延びる。
 生き延びてみせる!この歌声が響く限り、まだ、闘える。
 そう、僕たちはまだ、歌えるのだから!


 …敵増援が来る前に、なんとか残りの殲滅に成功し、戦場を離れることが  出来た。

 翌朝、いつも通り登校する。初めての戦死者に、クラスのみんなの口も何となく重たげだ。
僕の心にも来須の死は暗い影を投げかけている。つき合いも浅かったのに、何故、あんな言葉を残したのだろう。まるで死ぬ事を予感でもしていたかの様に。そして、僕の心を見透かす様に。
 とりとめもない事を思いながら歩いていたら、いつの間にか正面グラウンドに出ていた。気がついたら、若宮が独り、そこに居た。
 見るともなく彼を見る。

 若宮はこちらに気がつくと、微かに笑って敬礼した。

 「…!」

 その時僕はいったいどんな顔をしていたのだろう。
 きっと泣き笑いの表情をしていたに違いない。
 ゆっくりと手を下ろして、去っていく若宮の背中を見ることも出来ず、僕は空を見上げた。
 昨日の雨が嘘のように晴れ渡った、抜けるような、青い空。
 哀しみを、吸い込むような、深い藍。


 「さようなら…」

 誰にともなく呟く。
 その時僕は、明らかに昨日までの何かに、別れを告げたのだった。

《Ende.》



これがGPMというゲームにどっぷりはまったリプレイ。
最後の台詞だけは捏造ですが、こういう風にエピソードの
繋がる偶然が、私を転がり落としたという訳ですね。
お陰で今やとんでもない彼岸に(爆笑)
BY. S_Ita./2003-10-19_add.


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