「大陸ファミリア」 −パイロット版−



 今日は、天気が良いので、欲張り気味に。



 「海へ、行きませんか?」と善行が呟いたので、三人で、出かけた。
 車を借りてきた若宮は、久しぶりに義手を付けていた。
 後部座席で、萌は黙って流れる風景を眺めている。


 夏らしい日差しが降り注ぐ、アスファルトの道。


 じきに、視界が開けた。
 それは、まぶしい程に輝く水面。
 潮の香りが鼻をつき、潮騒が響き渡る。



 目の前に広がる、青い海。



 若宮は適当な処に車を止めると、後部トランクの扉を開き、畳んでいた車椅子を取り出す。
 その間に萌が、するりと飛び出して、人気の無い浜辺に向かって行く。
 折り畳みのそれを開いてから、後部座席の善行を降ろして乗せた。
 「すみません」
 一向に体力が戻らない善行の身体は軽い。



 車椅子を押して海岸に向かう。



 波打ち際では、萌が、ふわり、ふわりと遊んでいた。
 水をすくい上げる、緩慢な、どこか優雅な、動き。
 髪についた水滴が、きらきらと、萌を飾る。


 「…杖を、下さい」


 善行の、決然とした声が、した。
 言われて若宮は、車に松葉杖を取りに、戻る。
 萌と作った弁当も、一緒に持って。


 生きてる方の腕で、痩せた身体をそっと抱える様にして、杖を渡す。
 「有難う」
 柄をしっかりと握って、立ち姿勢になったのを確認してから、若宮は、手を離した。



..To_be_Continued..


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